2021年7月9日金曜日

緊急事態宣言下での「無観客」:五輪を強行する意義があるか

 今回の緊急事態宣言下での「無観客」東京オリンピックの強行開催を昨年の「延期」を認めた時の誰が想像していたか。安倍元総理の「完全な形での開催」、「新型コロナに打ち勝った証として」の開催意義は菅総理に重くのしかかっていたはずだ。

菅総理の頑なな「有観客」の背景には新型コロナをコントロール下に置くことなのだ。そのためにワクチン接種に大きな期待を持ったが、思うようには進まない。

菅総理は口癖のように「感染者は減少傾向、病床使用率も緩和」と成果をコメントするが変異株での感染拡大もあって東京はステージ4、第5波にはいったと専門家は警告する。

バッハ会長を迎え8日の五者会談で緊急事態宣言下での「無観客」強行が現実味を帯びてきた。緊急事態宣言での強硬だから、今までのようにあまり効果がなければ爆発的感染拡大の可能性もある。途中「中止」の可能性を指摘する政治家も現れた。

会談内容は、「一律無観客」とニュースが流れたが、その後に丸川五輪相が「東京は無観客、他の会場は自治体が決める」と訂正した。政府が最後までこだわった結果か。

驚いたことにバッハ会長は緊急事態宣言をよく理解していなかったようだ。会談で「緊急事態宣言はどんなものか、どんなインパクトがあるか」と訊ねたそうだ。先に「緊急事態宣言は関係ない」と言っていたのは何も知らずに言ったことなのか。

新型コロナとの闘いは今、真っ最中、打ち勝ったとは言えず、逆に負ける可能性もあるのだ。専門家のシミュレーションではこのままいくと一日の感染者数が1000人を超えるという。

では、何のために強行開催なのか。

緊急事態と言う宣言下でもこのような大きなイベントを「安全安心の対策」を講じて実施できる力を日本は持っているということをPRする政治的目的が大きいのではないか。

一方で、ワシントン・ポスト紙は「明らかに楽しくないイベント」と巨大な投資を酷評する。バッハ会長を「ぼったくり男爵」と言ったのも同紙ではなかったか。

当然だ。無観客は入場料が入らない。900億円にもなるらしい。東京都は損失の補てん、寄進競技場の維持管理、関連開発行為で巨額な債務負担が生じる。都財政の改善にどう取り組むのか。

一方、アスリートも新しい競技場で多くの観客の前で演技を見てほしいと願っていたが、ドンナ心境なのだろうか。

国民もアスリートも不満の残る「楽しくないイベント」なのだ。

結果論だが、これだったら昨年の時点で「中止」していた方がよかったのではないか。「先見の明」があったと評価されるのではないか。そしてオリンピックの在り方が見直されるチャンスにもなったのではないか。

このままでは、莫大な放映権料を手にして懐も痛まない従来通りの「金の亡者」のIOCにならないか。もうオリンピックに大きな期待はしない方がいい。






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