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朝日新聞 2022.12.17 |
リベラル派と思っていた岸田総理が従来の政策を脱し大転換が続いている。原発政策もその一つだ。地球温暖化対策では民主党政権時の「30年の原発比率ゼロ」は福島第一原発の苦い経験からだろう。
2030年の温室効果ガス排出量削減目標もあるが、達成したとしても気温上昇は2.5度で1,5度の努力目標をはるかに超える。
そして今回のロシアによるウクライナ侵攻で、経済政策としてロシアの石油、天然ガスなどの輸入禁止でエネルギー危機に直面するや疎まれていた「原発回帰」が出てきた。
しかし原発回帰と言っても既存技術、安全対策、人的問題、新型炉の開発そして使用済み核燃料の保管と問題は多く、何ら解決していない。福島第一原発の廃炉事業も多難らしい。汚染水に海洋投棄も漁民の了解が取れていない。
テロなどに対する安全対策では巨額な費用がかかる。それでも業界は再稼動めざし投資するが、電気代に上乗せし国民の負担になる。
原子炉の寿命も40年とされていたが0年に延長するらしい。更に停止されていた期間は除外だから設備としては60年以上だ。原発と言う特殊分野での材料、資材の寿命はどうなのか。運転再開すると直ぐゴム類の劣化で漏れが生じ運転を又中止する事態になる。
使用済み核燃料の保管場所の選定も進んでいない。今北海道で2自治体が調査依頼しているが、本音は交付金ではないか。調査に協力すればカネがもらえ、財政上メリットがあるのだ。
新しい技術開発として「次世代炉・・革新軽水炉」の建設が浮上してきた。廃炉が決まった原発の立替で有力視されている。2030年代半ばまでに稼動を目指すというが建設費が膨大らしい。三菱重工が熱心らしいが電力事業者は建て替えに否定的と言う。「運転延長」を望んでいる。
人的資源、資金をどう配分するかだが、事業者は運転年長なのだろう。
こういう動きは所謂経産省、専門家・・原子力ムラ・・の中での動きだ。国民の意見をどう反映させるか。パブリックコメントのタイミングが問題になっている。
その専門家集団も「専門性」については疑問符がつく。確か福島第一原発事故時に民主党菅総理が当時の原子力委員長の斑目さんに「水素爆発は大丈夫か」と質問した時に「大丈夫です」と答えたニュースを覚えている。その直後にあってはならない「水素爆発」を起こしたのだ。「専門家バカ」「専門もバカ」といわれたものだ。
それと、電力事業者トップの経営意識も問題だ。原子力発電と言う一番危険な事業を似ないながら安全意識に疎くては困ったものだ。
当時の東電の旧経営陣4人が「予見可能性」で係争中だ。これほどの被害を出しながら自らの責任を認めようとしないのだ。
又、わが国は災害大国だ。原発立地が活断層の付近に立地したり、緊急事態の際に住民の避難対策が不十分な原発も存在するし、万一災害が発生して時に琵琶湖が汚染すれが関西地区の飲み水に障害を起こす危険もある。
人材教育にも影響しないか。大学には原子核工学などの専門学部があるが言われている「廃炉教育」では情けない。恐らく新しい軽水炉の開発にも力を入れているのだろうが、人材確保が耐えないようにすべきだ。
遅ればせながらパブリックコメントを実施されるようだが、専門家の判断より素人と言われる国民の判断が正しい場合がある。官僚、専門家は国民をばかにしてはいけない。