2020年12月5日土曜日

寺田寅彦博士「学問の自由」で随筆:学者の「希望」と「正義」の葛藤、今を考える

寺田寅彦随筆 「読書と人生」より
             角川ソフィア文庫 
 

菅政権は何故、憲法の「学問の自由」にかかわる面倒な事案に足を突っ込んだのか。一見弱いと思われる政府所管の日本学術会議の人事に介入して政府機関の構造改革を進めようとしているのか、それとも安易に政府の政策に反対する人文科学分野の学者の任免を拒否してけん制しようとしているのか。 

任命権があるからと言って、権力を振りかざし、反対に説明責任の果たせない菅総理をどう思うか。 

新聞報道によると、菅総理は都合の悪いときは「答弁を控える」とよく言うが日本学術会議の6人の任命拒否では56回も使ったという。「国家公務員で人事に関すること」というがその理由はとってつけた感じだ。 

正月休みに本を読もうと探していたら角川ソフィア文庫で寺田寅彦博士の随筆集が5冊出ていることを知り購入した。岩波文庫の5集も購入していたので内容をチェックしてみた。 

随筆「読書と人生」の中で「学問に自由」が目に留まった。 

今、日本学術会議新メンバーのうち6人を任命拒否し「学問の自由」で憲法違反だと菅政権が直面している問題でもある。 

博士は学問の研究は絶対に「自由」でありたい、これが学者の「希望」だという。問題はこの自由がどの程度可能なのか、そういう自由があるのか、多数の人間によって何時までも望ましいことなのかと疑問も呈する。 

問題が複雑になって簡単には片付けられない、特に複雑きわまるのは社会人間に関する人文科学分野だという。昭和8年に「鉄塔」に記載した随筆だが、今も十分に通用する内容だ。 

随筆では環境面から研究の自由に関する事実を挙げているが、何時も研究の「合理化」に脅かされているのも事実という。 

そして、研究者としての面から、これで良いのかどうか、どうすれば良いのか、一切分からないと博士は言う。

一方で「正義」という考え方が人間である以上あるという。こんな研究の自由を求めているだけで良いのかということか。「希望」と「正義」で面倒な葛藤が起きるとも言う。 

「正義」とは国民に代わって菅政権が任命権行使、組織の見直をやっていることか、それとも学者、研究者から日本学術会議への批判が高まっていることか。

政権側の圧力ではなく、日本学術会議主導の改革であってほしい。

 

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