地球温暖化と原発問題は、それぞれの立場の意見を聞くとすべてごもっともと思えるからこそ、難しい選択を強いられることになる。成果の見えない地球温暖化対策だが、必ずやってくるのが国連気候変動枠組み条約国会議COPで今回で25回目になる(COP25)。
新しい動きとして、CO2排出量世界第2位のアメリカが「パリ協定」離脱した。でも締結国同士で取り組みを進めるらしい。日本も厳しい立場に置かれている。先の国際会議で小泉環境相の国際舞台初デビューの機会だったが「具体的削減計画がなかった」と言うことで発言の機会が与えられなかった。また日本は「化石・・・」とも皮肉られている。
確かに「原発は?」と問われれば「NO」と言えるが、「地球温暖化は?」と問われれば「?」となる。地球温暖化と強調されれば「原発NO」は声が小さくなるが、各立場、分野で評価が大きく異なるのだ。
海水温に上昇による台風の巨大化、気圧配置にもよるが局所豪雨、帯状豪雨、海水面の上昇による島国の生活支障、南極、北極の氷の氷解、そして氷河の後退、乾燥による山火事、アメリカを襲うハリケーン、人為的だがアマゾンの緑の減少など地球温暖化に影響とみられる現象が世界的規模で増えている。シベリアでは温暖化で凍土が解けメタンガスなど地球温暖化原因物質が放出されている。私たちが排出するCO2など温暖化原因物質を削減すれば解決できる問題なのか。
政府の考え方はどうか
安倍政権は原発再稼働に舵を切っている。原発は電力コストを下げるので日本経済への影響が大きい。石炭石油を減らすことで電力業界は経営が楽になる。一基動かせば赤字がぶっ飛ぶと言われているほどだ。ただ、原発再稼働も安全確保が前提だ。地震対策、テロ対策が強化され数千億の費用が掛かる。それで地元住民が再稼働反対だったらどうするのか。陣と自治体の財政問題も絡んで賛否拮抗か。
また、今まで築いてきた原子力技術をどう維持していくか。原発ゼロでは廃炉技術しか生かされない。そこで原発の輸出になる。経団連も推奨している。
小泉元首相の行動が面白い。現役時代は原発賛成派だったが、総理を辞めると考えが変わって今は「原発ゼロ」を訴えて行動を起こしている。「安倍政権は間違っている、やればできる」というのだ。政策責任者と一般市民で立場が変われば考えも変わってくるのだ。
経済団体はどうか
電力企業が加わっているし、今は原発メーカーの経営者が経団連の会長だ。輸出にも賛成している。電力コストが下がれば企業の経営にもメリットがあるし、電力会社の経営は大きく改善する。
日本原子力産業協会は「CO2を排出しない原子力の活用は必要不可欠だ」という。「CO2を排出しない」とは「運転中のこと」であり、原子力設備を作るには当然にCO2を排出することを忘れてはいけない。
国際原子力機関(IAEA)はどうか
原発の利用がなければCO2排出削減、気候変動での目標達成は困難と見ている。
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)はどうか
2℃未満できれば1.5℃以下に抑えたい目標だ。化石燃料を大幅に削減し2050年までにCO2を排出しない電源を80%以上にする。原発は「発電時にはCO2を排出しない」と念を押している。
いま世界で稼働中の原発は440基(約1割)、20億トンのCO2が削減可能と言う。気温を抑えるシナリオの中では50年の原発割合はどのシナリオでも10%程度を見ている。
EUはどうか
原子力は気候目標達成の役割を果たせるという。
COPはどうか
高い資本コスト、10年と言う長い建設期間、事故と核拡散のリスク、廃棄物の長期保管で社会の反対にどう対応するか。
世界の動きを見ると
中国は東南アジアへ輸出、英国へも輸出することで英国内ではエナルギーまで中国頼みかと批判も出てきた。ロシアも原発輸出だ。小型モジュール炉の開発も進んでいるらしい。
原発に頼らないエネルギー政策をドイツ、イタリア、台湾が推進しているらしい。「パリ協定離脱」を宣言したアメリカも40年と言う寿命を超えての原発の運転を目指しているし、再生エネルギー、天然ガスの価格低下で原発の採算も悪化しコスト競争に原発は破れているという。やっぱりアメリカは資源大国だ。
こう見てくるとIPCCが目標にしている気温上昇を2℃未満に抑えるには運転中にCO2を排出しない原発の存在は大きく原発に反対しているのは誰だということになる。
IPCCも化石燃料を減らし、再生エネルギーなどCO2を排出しない電源を80%に上げれば可能と見ている。その時電力コストはどうなるのか。
原発を廃止しても温暖化は抑制できるという調査研究もある。石炭火力を廃止し、太陽光、風力発電を8~9割に、バイオマスガス火力ではCO2回収技術を併用するシナリオだ。
しかし、成功するかどうかは政府がそういう政策に変更しなければならないだろう。しかし、原子力産業は大きな経済規模だ。
今までは原発に慣れていた。これほど巨大技術で安全なのは原発しかないと洗脳されていたが、チェルノブイリ、JOCそして福島第一原発の事故で安全神話は崩れてしまった。一度事故を起こせば甚大な被害をこうむることが明らかになった。
全世界が福島第一原発の被害状況を知っている。それでも原発容認はどういう考えなのか。
朝日新聞(2019.12.8)の時々刻々の「原発アピール躍起だけど」を見てなかなか判断がしにくい「地球温暖化と原発」問題だ。COPで原発と戦っている間も我が国では地震対策、テロ対策の安全対策に巨額の投資をしながら原発は再起動を待っているのだ。
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