2021年3月11日木曜日

10年前の3.11は大震災の途中:首都直下、南海トラフ、富士山噴火が続く

 

読売新聞 2021.3.11 「3.11何が起きたのか」

3.11東北地方太平洋沖地震、津波災害から10年は震災後の10年ではない。これから続く首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火、日本海溝、千島海溝沿い巨大地震など大震災の間なのだ。

歴史学者の磯田さんは「今は震災後ではなく「間」なのだという。ポスト震災ではなく、between 震災で「災間」に生きているのだという(読売新聞2021.3東日本大震災10年)。 

そして「「防災」とは起きていないことを想定すること」ともいう。全国各地に散らばる古文書から災害の記録を探し先人がどう行動し考えたかを掘り起こしているのだ。 

全くの正論だ。 

地震学者の中では21世紀は9世紀に酷似しているというのだ。 

そこで、「歴史の中の大地動乱」(保立著 岩波書店2012.8)を開いて9世紀に起きた大震災を見てみた。 

9世紀の災害として、富士山噴火(800、802、864年)、北関東地震(818年)、京都群発地震(827,851,868,880年)、伊豆火山噴火(832年)、伊豆神津島噴火(838年)、鳥海山噴火(839,871年)、信濃地震(841年)、北伊豆地震(841年)、越中越後地震(863年)、阿蘇山噴火(867年)、陸奥海溝地震・津波(貞観地震 869年)、大和地震(869年)、開聞岳地震(874,885年)、南関東地震【878年】、南海地震(684年)、東南海地震(887年)、十和田大噴火(915年)などが挙げられている。 

私もかなり生きているが、まだ聞いたこともない地震、火山噴火が多いのだ。後80年の間に頻発するのかと考えると身構えせざるに入られない。 

1100年後の2011年に貞観地震、津波(東北地方太平洋沖地震)災害を経験した。 

寺田寅彦博士が言うように、時代とともに技術の進歩は一旦災害が起きると思いもかけない規模の大災害になる。1000年前は原子炉などなかったが今回は福島第一原発のメルトダウン事故を起こし津波災害にさらに災害を大きくした。 

どのテレビ局も当時の巨大津波が押し寄せ、引いて行くシーンは想像を絶する光景だ。とにかく津波高さには驚く。30m近い津波が押し寄せたのだ。震源が深いほど津波のスピードは速い。 

津波の高さは住民の避難の判断に重要は影響を与える。津波の低い高さを告げると住民は「その程度か」と非難が遅れる。 

しかし、今回は「地震が来たら高台へ」と教え込まれ実行した住民は助かったが、周りの人に気を配ったりしていたら逃げ遅れる結果になった人も多い。 

今回の災害でどういう教訓を伝えるか。防災教育が必要なのだ。テレビの報道によると今回の災害を後世に残す運動もあれば、10年で閉める施設もあるらしい。 

そして、さらにいつ来るかはわからないが、首都直下地震(今後30年での発生確率は7%)があり直近では1923年、M7.9、最近の確率の見直しで3~26%だ。 

南海トラフ地震は30年でM8~9で確率70%、いつ起きても不思議ではないが、最近の見直しで26%以上と言う。1707年の宝永地震、安政南海地震(1854年)、安政東海地震【1854年】、昭和南海地震【1946年】、昭和東南海地震(1944年)が発生している。 

南海地震の発生は2030年代の中ごろと予測する専門家もいれば、南海トラフ地震は200年先という予測も発表されている。 

富士山噴火は直近で1707年宝永大噴火がある。300年以上経ているので噴火の可能性は高い。先に箱根での噴火が心配されたが、箱根は1000年周期(?)、過去の富士山の噴火の歴史を見ても箱根山が同時に噴火した記録はなかった。地下でマグマの道が連なっているというがちょっと違うのではないか。 

どう考えても磯田さんが言うように「災間」なのだ。 

政治家で貴重な経験をした民主党政権時の菅直人さんは、「東電に撤退するな」、周囲のアドバイスを振り切って現場に飛び当時の現場の責任者だった吉田所長と会ったのも、外国の力を借りるのではなく「自分たちの手で何とかしよう」と考えたためだという。事故が起きる前までは「原発は安全」と教えられていたが、日本特有の地形などを考慮せずにアメリカの設計をそのまま取り入れた結果の大災害だった。その後「原発ゼロ」の考えが広がった(読売新聞2021.3,4最悪想定が危機管理)。 

ところが東電は反対のことを言う。先日の新聞で復興を確かなものにするために原発の再稼働を訴えていた。例えば汚染土の処理も東電の株を売って収益で費用に充てる予定だったが、東電の株価は300円程度、実際には1500円ぐらいに上がらないとダメらしい。だから原発再稼働を認めてくれと言うのだ。 

困ったものだ。 

復興計画も多額の予算を掛けながら思うような結果になっていないようだ。まず人口減が止まらない。復興計画が遅れて住民が他の市町に住み着くと帰ってこないという。立派な住宅地、商業施設、インフラが整備されても人口減はどうしようもない。

もともと被災地は過疎化が問題になる地域だったのだ。 

経済学者の猪木武徳先生は「元に戻すよりどう前に進めるかだ」と指摘(朝日新聞2021.3.9歴史に流れ変わったか)、「地域の視点にあった再建」の重要性、「成長モデル」ではなく、「縮小モデル」を御厨さんは訴える(読売新聞2021.3東日本大震災10年)。 

そして、記録に残し後世に伝えること、被害を最小限にする「減災」が防災のメインになるとハザードマップ、防災教育の必要性を河田先生らは訴えている。 

3.11被害の現状を見るにつけ当時の災害の大きさを思い出す。10年もたてば風化するのだ。

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