2019年7月22日月曜日

2019年参院選が終わって(2):有権者は安倍とともに「前へ進む」選択をしたのか

2019年参院選が終わった。勝者は誰かと言いにくい結果に終わったが、言えることは好むと好まないとに関わらず安倍政権とともにあるのだ。「前へ進む」ことでどんな希望、期待が持てるのか。安倍総理はことあるごとに民主党政権を「あの悪夢のような」と形容しているが、では安倍政権は「バラ色の」政権なのか。

いろんな公約をしているが、すぐに表面化する政策課題はいくつかある。それがことごとく込み入った内容になっており簡単に方向転換できないのだ。たとえ安倍総理に代わって新しい総理が出てきたとしても「その尻拭い」は大変なのだ。

得意とする(?)外交を見てみよう。

対中では尖閣諸島の国有化以来、領海侵犯が絶えない。さらには東シナ海での勝手な海洋開発だ。日中首脳会談がされたといっても一向に改善されない。漁民は不安で操業もできないのだ。

対ロでの北方4島返還問題は、平和条約締結が前提となったが、ロシアのプーテイン大統領は「島は返せない」「経済開発でカネをだせ」が念頭にある。安倍総理の思いと現実には大きな隔たりがあるが、国民には詳細を隠している。

対米外交はトランプ大統領との類まれなる友好関係を保っているが、デイールでは関係ない。事あるごとに脅されて高額な兵器購入を要求され、応じるとツイッターでトランプ大統領がお礼を言う。

とりあえず、日米貿易交渉はどうなったか。今も続行中と言うが、すでに決まっているのではないか。参院選を控えて農産物、自動車で不利とわかると選挙に影響するので8月に発表することになったというが、トランプ大統領は「期待している成果」という。逆に言うと日本側が大きく譲歩していることか。

日米安保条約の片務規定、米軍事費の更なる肩代わりが要求されている。地位協定を含め見直しは望むところと野党は言うが、日米安保は日本の政治の安定条件なのだ。だから総理に就任すると即、アメリカ詣でだ。確かにこれから日本は少子高齢化で日本領土を守ることにも事欠く時が近づいている。

とりあえず出てくる問題がホルムズ海峡の安全確保だ。トランプ大統領は恩恵を受けている国が負担し合うことを提案し、「有志連合」で交渉が続いている。日本はこのニュースが出た瞬間に「憲法、法令を考えても対応できる環境にない」とコメントしたが、誰が見ても選挙向けのコメントだ。選挙が終わればアメリカ追随で加わるしかない。その時はどう釈明するかだ。

自衛隊を憲法9条に明記しても解決できる問題ではなかろう。イランとの友好関係も大事となるとウルトラCの策でも出てくるか。

兎に角外交で点数稼ぎは限界だ。

国内政治を見てみよう。

今回の選挙の結果、「安心安定な政治」を有権者は希望していると2階幹事長がコメントした。本当に安倍政権は「安定した政治」をやっていると思っているのか。おまけに「安倍4選」まで口にするから驚きだ。自民党内のポスト安倍はどう思ったか。

内閣人事局制度を悪用に長期政権を築こうとしている。民主政治の根幹を揺るがす忖度政治がはびこる。札幌での安倍総理の遊説で「安倍やめろ」ヤジで警察が男を会場の隅に連れ出した。警察までが忖度警備をし、言論の自由を妨害しているのか。

遅々と進まぬ国会の憲法審議会にしびれをきざし、テレビや新聞で憲法改正の推進、自衛隊の9条明記主張をする。今までの選挙では野党が「憲法改正反対」の訴えをしても自民党は争点から肩透かししていたが、今回は「憲法改正を審議する政党か、審議しない政党かを選択する選挙だ」と言いだした。

ご都合主義でなんでもできる安倍政権をうぬぼれている。有権者は発議条件の2/3の議席をかろうじて与えなかった。今後国会での審議がどうすすむか。

経済ではアベノミクスの成果だ。

景気基調も「悪化」になり、「やっと我々の実感に近づいた」と苦笑いする中小企業の経営者がテレビ画面に映った。街角インタビューでも「成果を実感できない」とう国民が多い。格差拡大も問題だ。ローカルアベノミクスはその一環なのか。

アベノミクスの根幹である「異次元の金融緩和」の縮小、出口戦略は金融政策の正常化に向け先進国の中央銀行に遅れを取っている。「2%物価上昇」に拘るあまり、出遅れているが、いつまでもこんな状況では許されない。

安倍総理の任期中にめどをつけるというがどうするのか。一方で金融政策は日銀に仕事、黒田総裁を信頼していると逃げる。

年金、2000万円生活費不足問題は今後も重要なテーマだろう。各党最低生活者への資金給付などを謳っているが財源確保はどうなっているのか。安倍総理は争点をはぐらかし年金制度の維持を節啓していたが、どうなるか。

喫緊の課題は消費税2%アップで10%へ。景気後退局面で増税は反対も多い。でも借金の返済、各種社会保障制度の維持にとっては確実に確保できる財源である。10月からの増税ではまだ時間もある。リーマンショッククラスの経済危機ともなれば収支もあるだろう。でも3度の先送りは決して強い政権のやることではない。

兎に角、しっかり国会で審議できる環境整備が大事だ。○○審議会、諮問委員会を多く設置しYESMANの民間議員も加え政策の提言をさせ、お墨付きを得て国会提出、ろくに審議も出ずの強行採決の手段に出る従来のやり方はいかがなものか。

これからの自民党が置かれている環境も安倍政権にとっては有利だ。

公明党は与党政権で自民党の補完政党、ブレーキをかける行動に出るが政教分離を問うと折れる。

国民民主は自民党に近い議員も多い。憲法改正では草刈り場になるだろう。社民党と同じ運命をたどるのではないか。

立憲民主も旧民進党の連中を集めて再建できるか。リーダーの力量が問われる。

ポスト安倍はどうか。保守系リベラルが出てくるか。

有権者は自民党支持で「前に進む政治」を望んだが、安倍政権を全面的に支持したわけではなかろう。「他よりマシ」しか選択理由がないのだ。







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