2019年7月16日火曜日

今日の新聞を読んで(276):「保護主義」台頭で「グローバリゼーション」はどうなる


将来予測で2050年までに「グローバリゼーションはどうなっているか」を予測したときに、「このまま維持できるか」、それとも「見直しが必要か」が議論され専門家の間では「見直しが必要」と結論された経済書を見たことがある。

米国発(?)のグローバリゼーションは米国企業に多大な儲けをもたらし続けた。その恩恵にあずかる人間よりも今、恩恵にあずからない、政策から疎外されている人たちが立ち上がった。イタリア、ギリシャにおけるポピュリズム政党の台頭、そしてトランプ大統領の「アメリカ第一」「アメリカ偉大そのまま」での「保護主義」の台頭は既成政党による協調路線を止め、「自国第一」路線へと舵を切った。

日本も以前から高い技術で良い品質の製品を世界に売りまくったために市場を荒らされた国から「内需拡大」を要求された。そのために前川レポート、21世紀版前川レポートで内需拡大策が提言されたが、いずれも失敗した。その要因は企業の儲けを家計に再分配できず、国内消費が伸びなかったことだ。その状況が今も続いている。

最近になって顕著なのが中国による輸出と覇権拡大路線だ。

中国製品の輸入増加で競争力を失った工場は閉鎖、城下町は疲弊、ラストベルト地帯の増加で疎外されていた人たち、そして外国人などの移民で職を失った人たちがトランプ大統領支持で立ち上がった。

中国からの輸入に恩恵を受けていた人も多かったが、自分たちの町、生活の疲弊を重視したのだ。

泡沫候補から一転、大統領に選ばれたトランプ大統領は「保護主義」「アメリカ第一」を掲げ多国間貿易を止め、二国間貿易でアメリカ優位の交渉を強行、「アメリカは今まで損をしていた」と貿易赤字の大きい中国を相手に高関税の掛け合いで貿易摩擦を繰り広げ、世界経済が下降リスクに直面している。

日本も御多分に漏れずアメリカの標的だ。アメリカは昔から日本を標的にしていた。以前は年次経済報告書(正式な名称は忘れた)があり日米両国が経済政策を審議し、その報告を毎年政府に挙げていた。要はアメリカが市場開放を要求していたのだ。小泉内閣時の郵政民営化もその一つだった。そして今、日米経済懇話会(正式な名称?)あり、日米貿易交渉がされているがその成果は参院選が終わった8月に公表するという。トランプ大統領が「成果を期待」というのだから日本は押されているのだろう。

昔は貿易と言うと比較優位の原則でお互いにメリットのある交易だったが今はどちらかが損をし、どちらかが得する結果になっている。

そんな時、読売新聞(2019.7.15)「地球を読む 「グローバル経済保護主義が迫る転換」と言う記事が目についた。伊藤・学習院大教授は「グローバル経済システムは30年前後の周期で転換している」という。

それによると1930年頃世界は大不況と保護主義の拡大、第2次世界大戦を経験、固定相場制が崩れ、ブレトンウッズ体制が崩壊、95年には多国間貿易体制の中核をなすWTOが発足した。

そして20数年たった今、「ハイパーグローバル化」時代に入り、中国が国際貿易に参入物、マネー、人が国境を超えて動く時代になったが、グローバル化で悪い影響を受ける人たちが強く反発するようになった。

グローバルな経済のトレンドとその反動でのローカルな動きを背景に「保護主義」が広がる現象が見られるのだそうだ。これからもハイパーグローバルな流れが継続するかどうかは見えにくい状況だという。

グローバリゼーションによる恩恵、損得勘定での「保護主義」がいつまで勢いを維持できるのか。国際舞台は「保護主義」vs「自由貿易」の構図がいつまで続くかだ。それもアメリカがトランプ大統領をいつまで支持するかにかかっている。

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