東海地震の切迫を主張し、政府は「地震予知ができるとすると東海地震しかない」と観測に力を入れるきっかけになった神戸大名誉教授の石橋先生が、東日本大震災の反省から「次の複合災害に備えよ」と警告している(朝日新聞2021.3.11科学欄)。
東海地震の震源域のど真ん中に中部電力の浜岡原発が稼働中だ。東海地震が発生したら浜岡原発も被災する危険があるのだ。それを知っている当時の民主党の菅総理は中部電力に対して運転停止を要請、一悶着あったが社長は「総理の要請」として重く受け止め停止を決断した。
石橋先生の「複合災害」とはよく言ったものだ。
「複合○○」と言うと、40年ほど前の作家有吉さんの「複合汚染」を思い出す。当時は環境汚染が華々しかった頃で、合成洗剤、化学肥料、除草剤など人間が作った毒物の複合で環境は汚染し、手に負えない事態になっていたことを警告した。オスの魚がメスになる生殖器にも大きな影響が出ていたのだ。
そして今、石橋さんは自然災害と巨大地震、津波の「複合災害」を警告する。
発表される情報を見ながら、「おかしいのでは」「危険なのでは」と常に考える習慣が大事なのだという。
これからは複合災害を考えなければならない。私たちはどうイメージし、どう対応するか。
既に869年に発生した貞観地震が1100年後の今、再来襲し、津波に対する安全対策に手を抜いた東電・福島第一原発がメルトダウンし未曽有の災害を起こした。
その結果、自然災害はゼロにならないが、巨大技術を使った原子力発電はゼロにできるという。首相経験者の小泉、鳩山、菅さんら3人が訴えている。小泉さんは総理の時はわからなかったが、総理を辞めてから「ゼロ」にできると考えるようになったという。
でも原発ゼロでは日本経済はいまのような成長していたのか。33基ある原子炉で9基が稼働している。政府、経済界は再稼働を訴えるが、発電コストが一番安いという主張も崩れたし、使用済核燃料の保管は一大事だ。保管場所の確保が難しい。ただ、事業者にとっては高い原油を輸入することがないので燃料費削減ができ経営上は大きなメリットになるのだ。
東海地震についてはさらに研究が進み、東海地震、東南海地震、南海地震、日向灘地震と南海トラフ沿いの地震として、単独発生も考えられたが、津波による堆積物調査、内陸のどこまで津波が届いているか、古文書などの調査から最悪の場合は4連動も考えられるという。
そうなると、首都圏から遠く九州まで被災が広範囲になり、交通路も遮断され、応援人数も確保できず近隣県からの支援は期待できない。
太平洋側の津波とバカにできない。四国の伊方原発、九州の川内原発も津波の被害が出る。
リニア―新幹線も災害の要因になるという。ほとんどがトンネルの中、アルプスの下には破砕帯がある。巨大地震の発生はトンネリ崩壊の危険もある。万一崩壊し運行できなくなったら、乗客をどう救出するのか。各所に非常用立て坑があり脱出できるというが、停電でもなったらどうするのか。
石橋さんは更に、リニア―新幹線は電力を使う。浜岡原発が稼働していると津波による運転停止、原発事故の危険だ。
広域に太平洋岸が被災する。すでに過疎化の地域もある。34mの津波で町全体が水没する地域もある。さらには、地震発生とほとんど同時に津波が来る。逃げる暇もないので。
新聞報道では町の中に高い鉄筋の避難場所を作っているが高齢者には不憫なようだ。教訓である「揺れたら逃げろ」も生かせないか。
他からの支援は期待できない。だったら「町自身、自分たちで何とかする」考えが出てくる。「分散」「小規模」がポストコロナにもあった街作りではないかと石橋先生は提案する。
そしていつも「何かおかしい」「危ないのでは」と考える理想的な社会が育ってほしいというのだ。
南海トラフ巨大地震、首都直下地震、相模トラフ地震、日本海溝、千島海溝添いの巨大地震は切迫しているという。富士山噴火、伊豆半島も危険だ。
政府や大学の研究機関の発表する情報をよく理解し、「今何をすべきか」考える習慣がほしいのだ。「安心、安全バイアス」が被害を大きくするのだ。
「いつか?」「今じゃない」と考えやすい。
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