「1984年」ジョージ・オーウェル
「二重思考」
21日の一都3県の緊急事態宣言解除については「これ以上宣言を続けても効果が薄い」と言う考えと「感染者数は増えている。第4波の危険もある」という解除反対の意見と「2つの考え」があるが、諮問委員会の専門家も全会一致(?)で菅総理が解除に踏み切った。
丁度、ジョージ・オーウェルの「1984年」(早川書房 2021.2)を購入し読んでいた。20年ほど前に一度読んだことがあるが、今年度の「大学入学共通テスト」の世界史Bで出題されたというので、改めて購読した。
その小説の中で重要な「二重思考」というアイデアが出てくる。私たちは伝えられることが真実でないと知りながらも、それが真実であってほしいと思う。信じると同時に疑っているのだ。多くの問題に対して簡単に態度を決めず2つの見解を持つのだ(同書 解説)。
これが可能であれば永久にその地位にとどまりたいと思う権力者にとっては大きなメリットだという(同上)。
これは丁度今、菅総理が総理の座を掛けて新型コロナウィルス感染拡大を抑制し、経済再生に軸足を移そうとする状況下にもいえるのだ。
宣言解除にあたり菅総理は、感染者数はピーク時に比べ8割も減っている、病床利用率も改善、解除条件はクリアーしているという。そして心配されているリバウンドは、段階的に緩和し、5本の柱で対応する。専門家も解除に賛成している。
更に本音としては「緊急事態宣言に慣れ」「長期間の自粛で気の緩み」も出てきたことだろう。このまま続けても効果は薄いのだ。
一方、解除の反対の意見もある。
感染者数が「下げ止まり」、増加傾向にある。解除条件をクリアーと言うが感染力が強く、死亡者も増える変異種の存在が考慮されていないときに作成した基準で見直しされていない。先行し解除した関西圏ではリバウンドの傾向が見られ実効再生産者数も1.1~1.3で第4波も目前だという。
ジョージ・オーウェルが言うように「二重思考」だ。国民も内心は専門家の指摘に賛成なのだ。テレビの情報番組での外出している人に対するインタビューも「こんな人出で大丈夫か」と懸念を示す。
菅総理の本音は、聖火リレー、オリンピック開催で国力をアピールし、総務省接待疑惑もウヤムヤにし、バイデン大統領との首脳会談を成功し、内閣支持率を確保し、補選、都議選、衆院選に勝つことだろう。2年ぶりの自民党大会で「私が先頭に立って働く」と主張したそうだ。
一方で、このままの感染者数で解除することは一時的に減少しようが再び感染者数が増加、1日1000人ぐらい感染者数が出ることは専門家のシミュレーションで明白だ。
「二重思考」でどちらが正解だったか。もう直ぐ結果が分かる。
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