2021年7月20日火曜日

今日の新聞を読んで(487):大事なのは「予見する能力」、「事後説明能力」、政治ばかりではない

 

朝日新聞(2021.7.18)「日曜に想う」の「予見と事後説明 そして勇気」の内容には全く同感だ。「ああだ こうだ」と声高に言うが、失敗した時、達成できなかった時の説明がないから信用を落とす。失敗した時は、批判を受けるがその理由を丁寧に説明する勇気が大事なのだ。 

これは何も政治に限ったことではないが、政治の世界では特に重要になる。 

曽根・編集委員は「チャーチル150の言葉」から政治家に必要なのは「先を予見する能力」「それが起きなかった事後説明能力」の2つの能力だという。「この2つの資質は相互補完的でどちらも欠かせない」というのだ。 

さすがチャーチル元首相と感心する。一方で、今の日本の政治家はそこのところが欠けている。政策でなくても自らの不祥事に関してスルーする姿が目立つ。こんなことでは政治不信が高まるばかりだ。 

菅総理はオリンピック開催について、「新型コロナに打ち勝った証」とし一日も早く感染を収束、安心、安全な日常生活を取り戻す」と誓う。 

しかし、「打ち勝つ」どころか東京の感染者数は拡大一方でオリンピック開催派「無観客」になった。安倍前総理の言う「完全な形」での開催ではなくなった。

それに対して菅総理から丁寧な事後説明がないのだ。「何故か」と国民は内心思っているが、菅総理はワクチン接種を強行する。丁寧な説明をする機会はあったという。それが都議会議員選挙だが、菅総理は一言も言及していないというのだ。 

そうだろうと思うが、菅総理が街頭応援に出ると批判する者が集まり「まずい」と周囲は考えたのではないか。でも官邸での記者会見などチャンスはあったはずだが、スルーしたかったのだ。 

ワクチンの接種が進めば、感染者数が減少に転じると菅総理は判断している。その根拠に英国で接種済が20%になった時に減少に転じたという情報を知っていたのだ。最近も英国での事例で40%になれば感染者数は減少に転じるという報告を耳にして担当者を直接官邸に呼んで説明を受けたと新聞に載っていた。 

ところが、オリンピック開催を控え、感染者数は拡大の一方なのだ。何故か、菅総理の説明が不足している。全人口のうち接種済は20%、G7でも一番低いという。 

河野担当大臣はワクチンの供給量と接種会場とのアンバランスを指摘、ワクチンが偏重していることを指摘して調整が必要と言うが、自治体は2回目の接種のための保持であって偏重ではないと否定する。 

うまくいかない時の理由は担当大臣に任せてスルーする菅総理に信頼はない。 

経済面でもいえることだ。安倍前総理は就任直後、アベノミクスで異次元の金融政策を発表、日銀総裁を更迭し、2年で2%の物価目標を掲げたが、2年では達成できず、8年たっても未達だ。 

国会で出口戦略を聞かれたとき、安倍前総理は「私の任期中にどうするか判断する」と言っていたが体調不良で政権を放り出した結果、対策も立てづに今になっている。体調が回復したのか、政治の表に顔を出し出した。 

何故、異次元の金融政策の是非、今後の対応について何ら説明しないのか。言う時は声高に言い、うまくいかない時、失敗した時の説明がない。 

時々、政治の場でも問題になっているがPDCAのサイクルを回して政策を進める手法に欠けているのだ。人気取りでPDまでは手を出すが、CAの過程がない。うまくいっている場合は継続、うまくいかない場合は検討し直し、方針転換で目標達成に向かう行動が必要なのだ。 

地震予知でもいえることだ。地震予知はできないという専門家もいるが、いろんな専門家がいろんな手法を使って予知とまではいかなくても予測しようとしている。その努力には感心するがなかなか当たらないのだ。

ここでも外れた時の説明が必要になる。 

FM電波異常、GPS、過去の地震発生周期からの予測、地震考古学からの予測など原理的には間違っていない手法が採用されているが、なかなか当たらないのだ。「当たらなければよかった」と思えばいいのだが、地震学者を疑うようになる。アマチュアだと名前が消えていく。

 東海地震もいつ起きても不思議ではないと発生が危険視された。地震予知の可能性があると考えられ、いろんな観測がされたが一向に発生しないし、観測データに異常が見つからないのか。

南海トラフ関連で巨大な地震の発生が危惧されている。震源域が3~4連動の可能性も出てきたために震源域も拡大された。海底に観測網を構築し監視が続く。 

予測としては2030年半ばに南海地震の発生が言われているし、巨大地震の発生はまだ200年先という研究報告もある。安心バイアスからするとまだ先を信じたい。 

首都直下地震も近いらしいが、「いつか」とは言えないが東京湾北部、埼玉県では頻発している。30年以内にM7クラスの発生確率も発表されているが、70%と言えば「いつ起きても不思議ではない」確率だ。一方確率の低い場所で巨大な地震が発生している。 

地震学者も自ら予測した事案ではその成果について丁寧な説明が必要だ。国民は誰も当たるとは思っていない。当たればむしろ不思議なくらいだ。それでも丁寧な説明は不可欠だろう。 

東京オリンピックもIOCバッハ会長、菅総理が言うような「安心、安全な大会」とは言いにくくなって来たのではないか。バッハ会長は「選手団などから日本へのリスクはゼロ」と言う意味のことを言っているが、とてもじゃないが信じられる状況ではない。 

選手団や選手村から陽性者、濃厚接触者が出ている。プレイブックの不備も野党から追及されている。内閣官房との議論で「これから見直す」という。もう始まるのに「これからか」と不信が強まる。人出の制御で盛り上がりに欠けているというが。人出増加が感染拡大の要因なのだ。 

菅総理の人気、支持率が下落し危険水域に治数いているというし、万一爆発的感染にでもなれば菅総理の政治生命は終わりだ。そうならないように「常に丁寧な説明」で国民に接することが大事ではないか。

 

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