新型コロナで1年の延期の末にやっと漕ぎつけた感じの東京五輪だが、いろんなトラブルがあったし、選手団の来日が増えれば新たなトラブルが予想される。登山家の野口さんが「今の状況では遭難のパターン」とメデイアに発していたが、正当論だ。
実際に競技が始まると国民の興味は五輪に移り新型コロナなどは二の次になる。国民の不満もそらすことが出来ることに菅政権は期待しているのではないか。
そして、苦難を乗り越え開催できたことを世界にアピールし菅総理の存在感を見せ、総裁選、衆院選に有利に持っていくのではないか。
今日の朝日新聞で「東京五輪をめぐる主な動き」が掲載されていたのでにらんでみた。
2013.9.8
東京オリンピック誘致、安倍前総理は「東北の復興を世界に」と言う。「復興五輪」だ。世界が心配していた原発事故も「アンダーコントロール」と言い放ったためにその後の復興作業に大きな障害となった。
2015.7.17
国立競技場の計画のみなおし。高い建設費、周辺に調和しない設計から調和した設計に見直しだ。
2016.4.25
エンブレムもベルギーの劇場のロゴに似ているとして使用中止、新しいエンブレムに。
2016.9.1
誘致コンサルタント料2億3000万円に疑惑発生、JOCは「違法な支出ではない」と言うが、何時もオリンピックでは疑惑が持ち上がる。
2019.3.19
招致買収でJOC竹田会長辞任、後任に柔道の山下さん就任。
2019.11,1
東京は酷暑が予想されるのでマラソンと競歩を札幌に。IOCが提案。
2020.3.24
東京五輪を1年延期、安倍前総理「完全な形での開催」を主張が後々「有観客」の拘るか
2020.12.4
大会予算、追加2940億円で総計1兆6440億円に。
2021.2.11
組織委員会森会長、女性蔑視発言で引責辞任、橋本会長、丸川五輪相
2021.3.20
五者会談で海外観客の受け入れ断念
2021.6.15
選手団、関係者が守らなければならないルールブック、プレイブック公表。
2021.7.8
首都圏での競技を「無観客」で決定、札幌、福島が続く。
大きくきれいな競技場でたくさんの観客の応援で競技したいと言うアスリートの要望と競技場を更新したい要望とが相まってユニークな設計の競技場だったが、建設費、周辺との調和で問題があり、設計のしなおしになった。当初からどうしてしなかったのか。バブル感と世界へのアピールを考えたのだろう。
当初、東京は盛り上がりに欠けるとIOCは難色を示したが、政治的にも「東北の復興を世界に」と言う希望が安部前総理に強く、政権が先頭に立って盛り上げた。
東京都の当時の猪瀬知事も4500億円の資金が準備されていることを強調していた。結果、「TOKYO」を勝ち取り現地の会場は沸いた。
しかし何時も付き合うのは誘致に関する「黒いかね」の問題だ。電通の関係者のアドバイスでアフリカ諸国に発言力のある委員の息子の会社と誘致契約を結んだようだが、疑惑が晴れずJOCの当時の竹田会長が引責辞任した。
問題はIOCもそうだが、JOCのおなじ人間が長く在位し権力を握るオリンピック村、オリンピック貴族が出来上がっていた。竹田会長の辞任はそこにメスを入れたことになる。
新型コロナの発生が無くてもゴタゴタしていた東京五輪も、新型コロナ感染拡大で中止か延期が議論されたが、安部前総理の意向で「延期」が決まった。どうしても「完全な形」で実施したいのだ。「新型コロナに打ち勝った証」として世界にPRしたいのだ。
そして今、感染拡大が止まらず、「有観客」から首都圏の会場は「無観客」に決まった。菅総理が最後のギリギリまで[有観客]に拘ったが東京の感染者数が960人になり、今後も増加する傾向があり、仕方なく「無観客」を認めた。
IOCも覚悟を決めたと思っていたがバッハ会長は「有観客」を諦めない。五者会談では「感染者数に改善が見られるときは改めて五者会談で見直す」と言うし、バッハー菅会談では「再度菅総理に見直し」を要求している。
アスリートは大勢の観客の前で競技したいだろうし、900億円の入場料の大幅減少が見られる。誰が負担するのか。組織委員会はすでに赤字だ。東京都が肩代わりすることになる。早速小池知事は政府と協議する意向を示したが、丸川五輪相は「拒否]だ。東京都にはまだ予算があると見ている。
東京五輪への反感が多い日本だが、バッハ会長は批判を避けるために「我々から日本人へのリスクはゼロ」と言う。「安心安全な大会を準備している」から心配するなと言うことだろう。
でも水際での陽性者発見、バブル方式にもほころびが見え始めた。分厚いプレーブックを完全に理解している選手、関係者はいないだろう。違反すれば退去を命じると言うが誰が監視し、誰が判断するのか。組織委員会が派遣する警備員に任せるのか。具体策は決まっていないだろう。
「無観客」開催でのオリンピックの意義はあるのかと言うことになるが、ここは政治色が強くなる。「東北の復興を世界に」→「新型コロナに打ち勝った証」→「苦難を乗り越えて開催にこぎつけた」ことを世界にアピールと言うことになるのか。
菅総理の政治生命が見え隠れする。何事もなければ「成功」、感染者数が拡大すれば「敗北」と言うことか。
菅総理が期待している海外要人の訪日も心もとない。菅総理の政治生命の限界を見つめているのか。バイデン大統領は夫人の参加、マクロン大統領は来期の開催国なので早くから訪日を宣言していたが、国内では求心力を失っている。
国連のグテレス事務総長は「安全健康]を優先し欠席だ。中国は冬季五輪開催国だが習主席ではなく、格下の出席になると言う。そんな中で韓国の文大統領は出席らしい。菅総理も「訪日ならそれなりの対応」という。二階幹事長は動いているらしい。
今回の東京五輪では多くの課題が出てきた。オリンピックのあり方が議論されるべきだ。誘致にそれほどのメリットはなくなったか。