2020年4月26日日曜日

ノーベル経済学受賞のステイグリッツ教授曰「科学と政府を重視、市場を見直し、皆が富を共有する秩序を作れ」と


ノーベル経済学賞受賞のジョセフ・スティグリッツ教授が読売新聞(2020.4.26)「あすへの考 対コロナ小さな政府の限界」の電話インタビュー記事で「科学と政府を重視し、市場を見直し、新たな秩序つくりが必要」と説いた記事が目に付いた。

スティグリッツ教授と言えば、「世界の99%を貧困にする経済」(徳間書房 2012.7)で「1%の上位が99%の下位から富を吸い上げる」格差拡大を警告し、「日本人に繁栄を幅広く共有できるか」と問うた。

その教授が、今回の新型コロナウィルス感染対応で右往左往する各国のトップ、特にトランプ大統領の政策を見て危機対応に疑問を呈する。

オバマ大統領が築いた公的医療保険制度の見直し、CDC予算削減、疾病対策局の解体は危機対応に逆行、トランプ大統領の「4月には終息後、V字回復」の判断は初動ミスを招き、今の米国は感染者数90万人、死者5万人という震源地中国の倍の国難に会いトランプ大統領自身「戦時大統領」という。

世界一豊かな国と思われていた米国が、新型コロナウィルスで人工呼吸器、防護服、マスク、検査薬などの医療現場での必需品が不足していることを露呈させた。

アメリカでも感染が一番多いNY州知事は感染対応で悪い情報を流すがトランプ大統領は経済活動再開を視野に入れた政策でNY州知事を対立している。最近も間違った情報として消毒薬を注射すればいいとコメントし専門家が猛反発、事故も起きているらしい。記者会見での発言を同席していた専門家が即否定するシーンも流れている。

トランプ大統領は選挙戦も控え経済再開を模索するが、今の景気後退は需給バランスではなく、新型コロナウィルス感染拡大の阻止と疫学的制御が問題なのだ。感染阻止で何か明るいニュースが出ると国民の不安は払拭され消費も上向くのではないか。

米国の失業率は3%から15%へ悪化、倒産も増加する。日本も同じことが言えるのだ。

こんなとき、ステイグリッツ教授は「強い政府」が必要という。

日本も同じことだが、規制緩和、福祉削減、緊縮財政、市場原理にゆだねる「小さい政府」を目指した。その結果富裕層の利己主義で最上位0.1%が全米の総資産お20%を占めるいびつな構造になった。

貧富の格差は拡大し、「市場の見えざる手」など機能しない。「ない」と同じなのだ。そこで国民を守り、社会全体に奉仕する「政府」が必要になるのだ。いわゆる「強い政府」だ。

ステイグリッツ教授は「科学を重視」「政府を重視」「市場原理を根本的に見直す」新たな秩序作りが必要と説く。

これはアメリカばかりでなく、日本にも言えることだ。今、ノーベル賞を受賞している研究は数十年前の研究だ。今は大学の研究費も削減されノーベル賞級の研究は無理だというし、カミオカンデでの研究は巨大な予算が必要だ。

新型コロナウィルス感染には臨床治験が不足している新薬が役に立ちそうだ。ベッド数不足など医療破綻が現実になってきているが、医療改革でベッド数を減らしたり、効率の悪い公立病院の統廃合もやっている。厚労省の医療政策は今回の新型コロナウィルスで見直しを迫られるか。国民の健康を守るのに逆行していないか。

経済界も事あるごとに対策を政府に迫る。異次元の金融政策では市場に流すお金は投資ではなく、内部留保(?)で460兆円になっている。何に使うのか。

改革のための「働き方」も労働者を守るよりも経営者の都合のいい改革になっている。労働条件の悪い非正規労働者が増え失業率が好転していることが本当に国民のためなのか。

安倍政権は政策検討に民間人を採用した○○○審議会、諮問委員会、懇談会などを多用して民間委員に政策を提言させたり、審議させ国会審議をおろそかにしている。YESMANだけで審議して国民の民意をくみ上げられるのか。

金融政策でも日銀にリフレ派委員を送り込み異次元の金融緩和策を継続、出口戦略も見えぬままマイナス金利、ゼロ金利を継続し副作用に警戒が必要だ。

「コロナウィルスの見えざる手」とともに「市場の見えざる手」も期待できない現在、「大きな政府」により一部の富裕層ではなく国民全体に富が共有できる政治経済が必要になる。

そういう風な新たなグローバル化の模索に向かうべきだとステイグリッツ教授は提言するのだ。


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