2020年9月27日日曜日

今日の新聞を読んで(396):賛否両論ある安倍政権の7年8ヶ月は何だったのか

 

次から次に政策を打ち出し「仕事をした」と思われる安倍政権の7年8ヶ月だが一体何だったのか。保守派からは評価される一方で、リベラル派からは否定され賛否両論だ。そして菅政権も安倍政策継承というとどういうことになるのか。 

そんな疑問が残った今、朝日新聞(2020.9.25)オピニオン&フォーラムの異論のススメで京大名誉教授の佐伯先生の「この7年8ヶ月の意味」という記事が目に付いた。 

その記事の内容は安倍総理は「行政官」として多くの仕事をこなしたが、「政治家」に必要なのは「旗」を立て、その旗の下で結集すべく人々を説得する「指揮官」だと言い、「向かうべき方向を指し示す指揮官」で無ければならないが、安倍さんはその意味では政治家ではなかったというのだ。 

長期政権を築いた政治家はそれなりの方向性を示していたが、安倍さんはきわめて不安定な「危機の時代」にあってアベノミクスでの経済再生と日米同盟強化でやり過ごそうとしただけだというのだ。 

その背景に、「世界情勢と日本の立場」の変化、東西ドイツの併合、ソ連邦の崩壊で冷戦時代が終わり米国を中心としたグローバリズム、民主主義の台頭、そしてリーマンショックでの世界経済の停滞、一方でその時世界経済を牽引した中国の台頭で米国vs中国の「危機の時代」を迎えた。 

安倍さんは、そんな世界情勢が混沌としている危機の時代にアベノミクスで長期低迷する日本経済を成長路線に導き、脱デフレを目指したが乗り切ることができなかった。人口減少は消費が伸びず経済成長に足かせになるし、自然災害の頻発は災害からの復興に巨額の財政が必要になるし、今回の新型コロナウィルスの発生は国民の安全を脅かす事態になったが、安倍政権の対応は後手後手で国民の支持を失う結果になった。 

過去の長期政権は、大きな政策課題を設定するのが容易だったという。体制の基軸は「平和憲法」「日米同盟」の下での「経済成長」の3点セットだったというのだ。

岸さんは「日米安保の対等化」、池田さんは「所得倍増、経済成長」、佐藤さんは「沖縄返還」、中曽根さんは「日米関係」そして小泉さんは「構造改革」を佐伯先生は上げている。 

しかし、今は冷戦崩壊後、米国主流のグローバリゼーション、市場中心主義、リベラルな民主主義の台頭を見たが、バブルが崩壊、長期経済低迷、08年には米国初のリーマンショックでEU危機、世界的な経済低迷を中国が財政出動で牽引する結果になった。中国は世界覇権を目指し「陸海空で米国優位」を脅かすほどまでになった。 

安倍さんはそんな危機の時代に「アベノミクス」「経済再生」で乗り切ろうとしたが、「何を成し遂げたのか」といえば明瞭な答えが出てこないというのだ。「何か中途半端で成果とは言いづらく、評価が難しいというのだ。 

政治家という指揮官としての方向性を示すことが出来なかったのだ。 

確かにアベノミクスで3本の矢、更に新しい3本の矢を放し経済政策に打ち込んだし、地球儀を俯瞰する外交、トランプ大統領、プーチン大統領との友好関係維持、集団的自衛権行使で日米同盟の強化、異次元の金融政策、財政政策、財政再建に取り組んだことは確かだが、それは行政官としての仕事だ。 

政治家としての「日本の方向性を示せたのか」ということになる。中途半端に終わり成果が出ていないのだ。 

経済成長、脱デフレで異次元の金融政策で「2%の物価上昇」を目指したが未達、出口戦略など話にも乗らない。規制緩和を中心とする成長選略も新たな利権者を作るだけ。成長にむけた財政出動も成果は無く赤字財政の積み増しだ。 

得意とする外交も国連改革でアフリカ勢の支持を得ようとするが常任理理事国入りは難しい。トランプ大統領とは2人だけの友好関係を築くが世界の舞台で「アメリカ第一」を主張するトランプ大統領の立場は難しくなっている。更に大統領選でも不利が伝えられている。 

プーチン大統領との関係も友好的というが北方4島返還問題は、ロシアの憲法改正で難しくなった。極東開発にカネをせびられるだけの存在か。北朝鮮との拉致問題も「前提なしの首脳会談」を提案しているが北は見向きもしない。

日米同盟強化で集団的自衛権行使を閣議決定したが、これが憲法改正反対、9条自衛隊明記のたっての安倍さんの改憲論に水を指す結果になった。「GHQに押し付けられた憲法」論も認識不足をさらけ出した。 

自然災害からの復興にはおきな財政負担が付きまとう。「東北の復興無くして日本の復興なし」は自民党政権のキャッチフレーズで菅政権も継承する。しかし巨額な資金投資も被災地は所詮は「過疎化地域」、人が戻らなければどうなるのか。災害復興を考え直すときではないか。 

そして今回の新型コロナウィルスで安倍政権は初めて国民の「健康、安全」の政策に取り組むことになったが、生活保障事業などで後手後手になり国民の信頼を落とす結果になった。何時収束するか分からないコロナ対策を菅政権は継承するらしいが、経済再生に前のめりで人の動きも活発になり感染拡大防止が重要視されてきた。 

東京オリンピック開催が究極の目標だろうが、実施に向けて前向きなのはバッハ会長と組織委員会、アスリート達で国民の半分は「中止」「延期」だ。民意を取り違えないようにしなければならない。 

「成果は何だったのか、そこから方向性が見えてこないか」と思うが、日本憲政史上初めての長期政権の達成が唯一のレガシーか。それにしても「モリカケ問題」「桜を見る会」「公文書偽造、隠蔽」「疑惑に対して再調査せず」「内閣人事局制度の悪用」など「負の遺産」が多すぎないか。 

安倍さんが辞任を発表した途端に内閣支持率が上昇したことがそれらを証明していないか。

0 件のコメント: