2019年10月12日土曜日

憲法改正の審議が進まず:憲法改正へのアプローチが間違っていないか


安倍総理の憲法改正意欲にもかかわらず、国会での憲法審査が進まず、自民党は遊説のため推進本部の陣容を新しくしたが、根本的にアプローチが間違っているのではないか。間違ったアプローチを取れば結果も間違っているのだ。

通常、国会での政策審議は常任委員会を設置し、与野党議員が議席数に応じて委員を出し審議し、煮詰まったところで多数決で国会へ提出することになるのではないのか。ところが今回は憲法審査会を設け、合意形成が基本になった。結果、与野党での合意ははなはだ難しい。多数決での議決ができないのだから進むはずがない。

そして、政策提案にも問題があった。あまりにも安倍総理が前面に出すぎたのだ。憲法改正は自民党の党是、岸元首相から続く安倍家の政治課題であり、押し付け憲法とも批判する。民意とかけ離れすぎではないか。

自然災害で活躍する自衛隊、海外での平和維持活動に派遣される自衛隊に敬意を払いたいのは誰だって思う。自衛隊員の子供さんが学校で自衛隊は憲法に反すると教えられ家に帰って「お父さんお仕事はそうなの」と聞いたという。これじゃがんばってくれている自衛隊の皆さんに失礼だ。

だから憲法9条に自衛隊を明記し、違憲論を封じたいというのだ。9条、1,2項の戦力不所持、戦争放棄を残し自衛隊を明記することの整合性をどう考えているのか。

憲法改正提起は安倍総理が前面に出すぎた。読売新聞のインタビュー、テレビ出演で憲法改正を主張、読売新聞は官邸のお抱えメデイアかと批判されたが、一向に気にしない。

選挙のたびに野党は「憲法改正反対」を掲げ選挙を戦ったが、自民党は争点にもせず肩透かしで野党を破った。しかし、先の参院選では方針を転換し「憲法改正を審議する政党か、審議しない政党か」と有権者に訴えた。今まで肩透かししていたのはなんだったのか。

改正は4項目に分かれているというが、なにも憲法に規定しなくとも通常の法改正で対応できるものばかりだ。

政府は一度も改正したことがないという。改正する必要性がないのだ。ドイツでは改正が多いが事情が違うのだ。憲法で記さなくても良い内容まで憲法に記しているので必然的に改正数が多い。今回の与野党による欧州4カ国の視察でもこのことが分かり、自民党は「肩透かし」を食らったとメデイアは伝える。

憲法改正もハードルが高いと見ると、集団的自衛権の行使を閣議決定で憲法の解釈を変更してしまう暴挙にでた。安保条約、対アメリカ外交でその必要性があったのだろう。

こういうことがあるから、安倍総理は信用されていないのだ。憲法審査会に出て議論に加わると、時間が来たと見ると強引に賛否を取り国会提出の暴挙に出るかもしれないのだ。

立憲民主は「安倍総理の下では憲法改正はダメ」というし、公明党も慎重だ。時期が熟していないと山口代表は言う。国民民主は「議論する場を整備する」という。

安倍総理が自分の任期中にも憲法改正したい意向で2020年までに目標設定をしたが、最近はこだわらないとも言う。本心は諦めたのではないか。

現在、憲法審査会では国民投票法改正で、CM規制を優先すべきだと野党が抵抗しているが、自民党も折れてくるのではないか。

これが今までの憲法改正での安倍総理、自民党のアプローチだ。全体的に安倍総理の意向が前面に出ている。これでは国会審議は国民投票法改正しか見えてこない。

新聞報道によると、今国会での予算委員会での立憲の辻元さん、国民民主の前原さんの質問で根本的問題が浮かび上がる。

辻元さんは、「2020年の憲法改正は非現実的、レガシー改憲、思い出つくり改憲を引っ張り込むのはやめてほしい」とほとんどの国民を代弁している。さらに安倍総理は今までのことを知らずに喋っている。改憲は本気ではないと感想を述べた。

一方、国民民主の前原さんは「憲法改正についていっていることが変わっている。憲法改正と言う外形的なものをやりたいだけではないか」と追求した。

これに対して安倍総理は、現実を見るにおいて時には臨機応変にやって行きたい。私が意欲を示すことは却ってマイナスになるという議論もある。不愉快とも思うがそれも一理あると答えている。

チョッと待った。憲法改正で「新しい国の形」を作るのではなかったのか。臨機応変に内容を変えて行くとはどういうことか。

まず、国の形を考え、憲法改正をやっていくのが本来の姿ではないのか。終戦直後、新しい日本国憲法を制定するとき、当時の幣原首相は日本の世界における立ち位置として、戦争放棄しかないと考え、マッカーサーに戦争放棄を憲法に記すよう直談判したという。平和憲法ができたきっかけにもなった。

そして今、安倍総理はどういう国を目指しているのか。それが世界に通用するのか。一度国民に問いかけてみたらどうか。

安倍総理の主導での憲法改正はアプローチが間違っていないか。まずはアプローチから見直すべきだ。





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