2019年10月8日火曜日

迷うトランプ外交:実務者、閣僚レベルでの合意も最後は大統領の一声


大統領選を控えてのこともあるが、トランプ外交の難しさが出てきた。実務者や閣僚レベルで合意をしても最後はトランプ大統領の一声でひっくり返るのだ。多国間交渉を否定し、二国間交渉を好むトランプ大統領の特徴なのだ。これじゃ相手国もたまったものではない。

北との非核化交渉もアメリカが「新しい提案もし有意義だった」と言えば北は「何ら譲歩していない」と真逆のコメントを発した。弾道ミサイルの発射は国連安保理決議違反と閣僚が言えば、トランプ大統領は「短距離弾道弾は問題ない」と無視する発言だ。

トランプ大統領は金委員長との友好関係(?)を大事にするから、実務者協議で議論が平行線になっても最後はトランプ大統領の判断に期待するから主張はエスカレートするばかりだ。

古い核施設を廃棄するも新しい開発を進め、弾道ミサイルもSLBM発射実験、新しい潜水艦の建造と数々の安保理決議違反を繰り返し「これでもか、これでもか」とトランプ大統領の出方を見計らう。

そんな中で北は中国に軸足を移し経済制裁の緩和を要求、何かしら経済制裁も中国、ロシアが加わってくることにより蔑ろにされそうだ。これもトランプ外交の失敗だ。

米中貿易摩擦はどうなっているのか。世界経済が景気下降局面に入ってきたというのに、米中協議はどうなっているのか。「アメリカ第一」を謳い、米国の産業、失業者の救済を目的に中国との貿易アンバランスの解消に向け、高関税の掛け合いとなった。中国が約束を守らないとみるとすかさず第4弾を打つ。

中国もそのたびに報復関税をかける。アメリカのやり方にキリがないと見たのか中国は今、様子見ではないか。大統領選まで大きな動きはないとみているのか。

トランプ大統領の米中貿易摩擦が今回の世界経済の下降リスクの引き金になっていることなどお構いなしに、予防措置としてFRBに利下げを強要する。FRBへの恫喝は中央銀行の独立性を蔑ろにしている。

トランプ外交がこんな調子だからトランプ大統領と個人的に友好関係を築いておけば安心なのかと言うとそうでもなさそうだ。日米貿易交渉を見ると譲歩を迫る直前で寸止めだ。

日米貿易交渉は当初からトランプ大統領は「良い成果を期待する」と日本側の譲歩を要求していた。土壇場まで交渉の合意文書に署名を嫌っていたが急きょ合意になった。

安倍総理は共同記者発表の席でウィンウィンの仕上がりを強調したが、日本の自動車への追加関税、対米輸出制限導入はかろうじて回避できたが実態は先送りだ。トランプ大統領も「必要と認めたらやるぞ」と警告している。思うような成果が出なければ持ち出されそうだ。

友好関係から他国に比べて大目に見てくれるだろうと思ったら大間違い。逆に譲歩を迫られるのだ。「シンゾ~は何か言えばすぐ買ってくれる」と安倍総理は足元を見られている。

トランプ大統領は今まで築いてきたアメリカの外交政策も平気で変える。地球温暖化対策での「パリ協定」離脱もそうだ。EUからの離脱を強行しようとするジョンソン首相を支持している。

多くのトランプ政権の外交も実務者、閣僚レベルでの合意があっても最後はトランプ大統領の判断次第だ。特に今は、大統領選を控えトランプ支持者のことしか頭にない。

今、トランプ大統領と重要な案件で交渉することは避けた方がいい。けん制し譲歩を迫られるだけだ。

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