2019年2月16日土曜日

福島第一原発「核燃料デブリ」つかむ:忘れがちになるが廃炉への道もその付近か

朝日新聞2019.2.14

ついつい忘れがちになっていた福島第一原発の廃炉に向かっての作業だが、14日の新聞ニュースで「遠隔操作」で核燃料デブリをつかみ動かすことが出来たと言う。廃炉には3040年かかり廃炉のための研究開発課題も多く莫大な費用がかかると言われていた。

つい先程まではロボットで核燃料デブリに近づく事が出来たと言うからつかんで動かすことが出来たと言うことは一歩前進だ。

しかし未だ多くの課題が山積している。

1つは高濃度放射能汚染廃液の問題だ。廃液タンクが敷地内一杯に広がり保管場所不足が喫緊の課題だった。既にどの原子力発電も海洋投棄している種類の廃液について東電が漁業関係者に海洋投棄を打診しているが風評被害を心配して許さない。

原子炉建屋地下に入り込む地下水の量を減らすために建屋周囲に凍土壁を作り汚染地下水の量削減に務めたが、今どうなっているか。増えているとも言われている。

放射能汚染廃液処理は当初から問題があった。技術も確立されていなかったがフランスの大統領が日本に飛んできて高価な廃液処理設備を売り込んだ。日本は飛びついて買ったが、これがろくに動かない代物だった。国産の処理設備も設置されたが、直ぐどこかでトラブルが起きる。

原発という巨大技術で一度事故が起きると対応しなければならない技術は全て未知なのだ。原子炉導入ではアメリカ式の設計ではなく、日本独自の設計、配置を検討してから導入すべきだと当時の著名な物理学者が提案していたが、そんな事は聞かず、予算化し導入を急いだ。中曽根さんが札束で電力業界の頬をひっぱたいたと言われていた。

しかし、いくら導入を急いだとしても、今となっては古い設備だとしても安全対策に謙虚になっていれば防げた大事故なのだ。政府の地震調査委員会は三陸沖で巨大地震が発生すれば15mクラスの巨大な津波が押し寄せると警告し、防潮堤に増強を警告していた。

今、公判中の東電強制起訴裁判で3人の旧経営陣が研究チームから15mの津波がきた場合の対策を提案されたとき、「信頼性が薄弱」として防潮堤の増強を渋ったのが事故原因の根幹ではないかと「安全配慮義務」を問われ5年が求刑された。

近くの東北電力女川原発、東電福島第二原発は地震調査委員会の警告を聞いて対策を立てていたのと比べても大違いで厳罰に処すべきだ。

ところでこの核燃料デブリを今後どう処理していくのか。

2021年からデブリ取り出しを開始するために、デブリの性状、放射能線量などの調査の前段階のようだ。

正常な状態での廃炉であれば原子炉の蓋を開けて核燃料棒をクレーンでつり上げ水槽に保管、放射性廃棄物埋め立て地に運べば良いが、福島第一原発は原子炉がメルトダウンした事故現場だ。全体像もはっきりしない。

恐らく建屋の屋根を開いてクレーンを設置、原子炉の上部を取り壊し格納容器の底部のデブリにどうやって近づくかだ。現場の全体が目で確認できないのだから不測の事態も想定しなければならない。

東電も儲けるときはしこたま儲けて、ピンチになると政府頼みでは東電の主体性はないのではないか。昨年だったか関連企業の財政的支援をすると言う事が分かり国会で責任追及されていたのを思い出す。

今は汚染水の処理、デブリの性状調査が話題になるだろうが、オリンピック後の2020年代は取り出しでの課題などが主要なニュースになるのか。その時、作業員の被爆問題が出て作業員の確保、作業員の教育など他の問題が出てくるのではないか。

安倍政権は原発再稼働、海外への原子炉売り込みに前のめりであるが、国内での新炉建設、海外での原子力発電建設は安全確保から建設費用がかさみコスト的に事業が成り立たない事例が出て来て計画が頓挫している。

これが大学の原子力教育にも影響し廃炉に対する研究開発では情けない。

更に怖いのは自然災害と原発立地だ。九州では姶良カルデラ大噴火の恐れのあるところに2箇所の原発が有り、四国では中央構造線帯の上に原発が有り、東海地震震源域のど真ん中に浜岡原発がある。

3.11東北地方太平洋沖地震の直後に当時の民主党・菅総理が浜岡原発の操業停止を命じたことで有名だ。

再び悪夢が起きないことを願うばかりだ。

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