2019年4月18日木曜日

リフレに次いでMMT:日本の金融財政に押し寄せる異端の経済理論


リフレ派経済に次いでMMT(現代金融理論)が日本の金融政策に押し寄せる異端な経済理論が相次ぐ。リフレ派は非伝統的金融政策である「異次元の金融緩和」で円安、株高に誘導、脱デフレを目指したが2%物価目標は達成できずアベノミクスも破たんだが、消費税増税を目前に財政出動か、財政健全化かが議論される中で「財政赤字は問題ない、インフレが一定水準を超えるまでは財政支出も構わない」という突飛な経済理論が出てきた。

専門家や財務省は大騒ぎで財政制度など審議会に反論するデータを提示し打ち消しに躍起だ。分科会長代理は「MMTは理論でなない」という(読売新聞 2019.4.18)。

私も昨日の朝日新聞(2019.4.17)「異端の経済理論 日米で論争」のニューヨーク州立大のケルトン教授とのインタビュー記事を見て注目した。リフレ経済に次いで、またまた不思議な経済理論に惑わされるのかと感じた。

そのMMTなる「現代金融理論」は「独自の通貨をもつ国の政府は通貨を限度なく発行できるため財政赤字が大きくなっても問題はない。政府が財政を拡大しすぎると財政破たんを招きかねないとされてきたが、インフレ率が一定水準に達するまでは財政支出しても構わない」というものだ(朝日新聞2019.4.17)。

「発行通貨の限界?」「インフレの一定水準?」疑問も出てくる。

思い出すのはレーガン大統領の時にレーガノミクスとして南カリフォルニア大のラファ―教授がラファ―曲線(放物線が逆になった曲線)なるものを示し、税率を下げれば税収が増えると説いた。しかし減税しても税収は増えず赤字財政の積み上げに終わった。

この時問題になったのは、現在の税率がどの辺にあるかだった。「税収がピークになるときの税率の前か後か」が説明できていなかったのだ。

このMMTは日本を実例にしているという。日本は今、財政赤字は1100兆円で対GDP比245%(一説には225%)と言われ先進国一悪い状況にあるがインフレにもなっていないし、金利も上昇していない。異次元の金融緩和で市場にカネを流しているため金利もゼロ近辺を維持し、インフレにもなっていない。2%物価目標にも程遠いのだ。だから「もっと財政支出をしろ」と言うのだ。支出を増やしても超インフレにはならないそうだ。

朝日新聞に載っているケルトン教授との一問一答を見てみた。

   税金は政府が収入を得る手段ではなく、政府が経済につぎ込むお金の総量を調整しインフレを抑制するのだという。

消費税を上げるということは市場に出回るお金の量を抑え、消費税を下げることは市場のお金を増やす効果があるということか。市場に出回るお金の量をコントロールするためなのだ。

   財政赤字を出して何をするのか。

政府支出を増やせば失業者が経済活動にもどり生産量が増える。インフレが怖いから完全雇用を目指さない。

カネを流せば景気は回復する。雇用も促進し家計もうるおい消費も伸び物価も上がる。しかし今は、カネを流し物価を上げ景気回復を目指すがうまくいかない。

市場にカネが出回るよりも貯蓄、内部留保で貯め、投資するとなるとM&A、海外投資で内需は拡大しない。

   日本は「自国通貨での債務は返済不能にならないと自覚している」という。

デフォルトのことを言っているのか。日本国債は60~70%を日本国民が所有しているので安泰だという考えは昔からあるが本当か。国債が下がれば騒ぐし、海外の所有者が許さないだろう。

   超インフレは極めて想像しにくい。民主的政府がカネを大量に刷っても完全雇用を目指した場合は起きないという。マネーの過剰ではなく、モノ不足から起きるのだという。

 マネー量は日銀が調整している。金融政策に効果なしと言う説もあるがM2、M3を考えると増加の一方でカネはだぶついているという。物不足がインフレを起こすというがいつも供給過剰状態で物不足ではない。むしろ経営者は儲かる仕事があれば借金してでも投資するという。

   日本で物価が上がらないのは債務がインフレを起こすレベルに達していない。債務は過大ではないという。

そのレベルはいくつなのだ。

債務があれば(借金が大きければ)支出を抑制し財政再建へ引き締めることになる。一方で財政出動でカネを流す。景気が良くなれば税収も増え経済は好循環になるが、相変わらず景気が悪ければさらに財政出動し赤字を積み上げることになる。

どの程度の基準かわからないがインフレの一定基準までは財政出動しても構わないというのだ。

   財政赤字を積んでも経済が上向かない日本はMMTの反対ではないのか。

  いい質問だと思ったが、ケルトン教授は将来に自信を持つことが大事で貯蓄に走らざるを得ない政策がとられ、将来の不安が高まっている。もっと支出し生まれる需要こそが成長のエンジンだという。

  政府は支出するが需要を起こし経済の好循環には結びつかず個人は貯蓄に企業は社内留保に励む。内需拡大がひつようだが少子化、高齢化で日本市場は縮小傾向で必然的に海外市場を目指す。

一つ一つ見ると理解できる点もあるが、「通貨発行の限度」「インフレの一定水
準」など肝心なことは不問だ。

では日本はどうすればいいのか。

社会保障制度への不安、巨額な財政赤字をかかえ若者世代にも将来不安は募る。
若者がそれなりの所得を得、結婚し子育てができる社会の構築がさきだ。その
ためには所得の再分配も考えなければならない。法人税下げや大企業、富裕層
への優遇税制など税制の見直しが必要だ。

経済界は「財政再建」が進まないことを気にするが、税制の見直しに何故、言
及しないのか。既得権益者であっては改革はできない。

消費税引き上げはどうか。MMTでいうと税は税収のためではなく、市場に回
るお金を調整するためだというとインフレも金利も低いのだから消費税増税は
やめて減税しろと言うことか。

でもやっぱり国、地方合わせた借金が1100兆円は多すぎないか。対GDP
比245%は先進国一悪い。しかし、その実態がわからないのだ。専門家に言
わせれば資産もあるので差し引き純債務は500~600兆円と言う。「だった
ら問題ないじゃないか」と言うことにもなる。

ケルトン教授の財政赤字でももっと財政支出しても構わないというご助言(?)
にお礼を言う気にはならない。



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