2019年4月1日月曜日

英のEU離脱での「民意を尊重しろ」:イギリスの議会制民主主義に何があったのか

イギリス議会 ロイターニュースより

国会が休暇になると多くの議員が議院内閣制、二大政党制で議会制民主主義政治を勉強するために(?)訪英するが、今そのイギリスでEU離脱での協定案でメイ首相が3度も否決される結果になり「民意を尊重しろ」と批判されている。一体、イギリスの政治に何があったのか。

国民投票では離脱賛成52%、残留派48%だからかろうじて離脱にはなったが肝心のEUとの協定案で3度も否決された。メイ首相も可決を条件に引退をほのめかしたがそうはいかなかった。

4月12日、5月22日が迫るにしたがって「合意なき離脱」か、4度目の協定案の提案か、解散総選挙で再度信をとうかの選択肢しかない。

EUだって安易に離脱されれば求心力がなくなる。感情的にも「イギリスは出て行け」ということなのか。

何でも国民投票で賛否を問う直接民主主義政治にも限界がある。当時のキャメロン首相も残留派だったが国民投票に打って出ても勝てると思っていたのだろう。

2016年ごろの政治の状況はどうだったのだろうか。

リーマンショック後の欧州各国は債務問題に悩まされていた。ユーロの危機、そして移民の急増が問題になりイギリスのキャメロン首相も対応していたのだろうが、EUの方針に従っているとイギリスの主体性が失われていくことに国民は危惧したのだ。EUからの離脱しか解決策はないと多くの国民が見たのだろう。

ユーロ圏内で財政危機に直面していた国も経済支援を受けるにあたって緊縮財政を要求された。その結果国内経済は疲弊、耐えられぬ国民がEU批判を強めた。

キャメロン首相は国民の不満をガス抜きするために国民投票で決着をつけようとしたのだ。

キャメロン首相の意に沿わぬボタンの掛け違いは「国民投票」にあったのだ。

当事者ではないので新聞報道に頼るしかないが、離脱か、残留かでのメリット、デメリットに関する情報公開が十分ではなかったのではないか。アイルランド問題も当時議論されていたはずだ。EUに加盟している是非、政治に主体性を取り戻したいなどグローバル化に見直しを期待したのではないか。

ところが国民の疑心暗鬼のままに国民投票になり、離脱がかろうじて勝利した。投票結果を見て「やってしまった」と反省する国民が多かったことに驚く。多くの国民も残留を期待していたのではないか。自分は離脱に賛成するが多くの国民は残留に賛成とみていたのだろう。

ところが、今の「離脱賛成」、「協定案反対」はどういうことか。協定案を詳細に知らないのでなんともいえないが、その協定案の賛否の差も小さくなっている。協定案の内容に変化が出てきたのだろう。あるいは可決されるように内容が変わっているのだろう。もう一回やれば可決の可能性もあるのだろう。

我が国も他人事ではない。安倍総理が前のめりの憲法改正も国民投票で多数決で決まるのだ。

イギリスの国民投票から学ばなければならないのは、僅差の多数決は国民の民意を反映していないのだ。

改正のメリット、デメリットを明確に示すべきだ。憲法改正で重要なのは為政者の権利を制限し、国民の権利を守ることだ。

具体的に改憲4項目をどういう格好で賛否を問うかだ。項目別の賛否か、一括賛否か。「どちらともいえない」を選択肢に入れると考えのまとまっていない人、割り切れていない人の割合もわかり最終判断で参考になるのではないか。賛成、反対で国を二分するようなことがあってはならない。

物見遊山で国会議員がイギリスに遊びにいくのではなく、イギリスの国民投票の結果を十分に勉強して帰ってほしいものだ。

議会制民主主義の危うさを再認識するイギリスのEU離脱騒動ではないか。



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