安倍政権の実績を評価するとき、どこに視点を置くかで評価が大違いになる。長期政権であれば問題は山積で、政策が民主政治、法順守、大義名分、立場を利用した私利私欲行為、国民にしっかり説明できているかなどで評価が違ってくるのだ。
朝日新聞(2020.10.28)の経済気象台で安倍政権の実績を振り返った時、世論調査で意外に評価が高かったことが紙面で取り上げられえていた。が取り上げられ大手メデイアも実効性のある批判のためには国民の信頼感を幅広く醸成することが大前提と指摘している。
そして「モリカケ、桜」疑惑は政権の全体の評価に決定的な影響を与えていなかったと評している。
専門家の目から見れば安倍総理でなければできなかったことと評価するが、国民は別な見方で評価するのだ。どちらの判断が正しいか。安倍政権のレガシーといえば長期政権だけで負のレガシーが多いという。
○集団的自衛権の行使ができるようになった。日本の安全保障では大事な一歩と評価できるが憲法改正を避け閣議での法解釈の変更をやってしまった。おまけに法制局長官を更迭しての強行だ。民主政治のルール、憲法解釈から考えれば否定的になる。
○安倍総理は憲法改正にご執心で読売新聞を使っての特別インタビューでその必要性を説いたし、国会審議では野党の質問に読売新聞を読めという。4項目の改正事項、9条への自衛隊の明記で意見論争に終止符を打つという。国会の憲法審議は遅々として進まない。民意も政策の優先度からすると低位だ。国民からすると評価できないのではないか。
○長期安定政権を築くことができたことは1年ごとに交代していたことを考えれば成果だが、大義名分のない解散総選挙を打って出て野党つぶしで圧倒的多数の議席を得た。時には政策隠しで批判を回避する手段にも出た(例 憲法改正)が議席数を確保できたとみると憲法改正を言い出した。
○内閣人事制度は官僚主導から政治主導への評価すべき制度だったが、安倍政権はこの制度を悪用し政権に有利な官僚を作り上げ、中央官僚は国民のためのものではなく安倍政権のための官僚制度になってしまった。
○安倍総理は息のかかった学者、民間企業家を重用し○○委員会、○○諮問会議を多く設立し政策にお墨付きを与え国会審議を軽視、国会では強行採決にもっていった。民意を反映する目的はいいが実態は政府、官僚が原案を作成し諮問にかけ、YESMANの了解を得ることだった。国会を軽視した運営は国民の評価を受けにくい。
○官邸官僚、補佐官などの重視が目立った。特に経産省出身者を重用し経済再生にかけたまではよかったが、新型コロナウィルス対策では事業生活支援策が二転三転、突飛な緊急時大宣言、マスク配布など右往左往する姿は国民の信頼を失い政権放棄する結果になった。安倍総理が最後に「民意が上がってきていない」と嘆いたそうだが、自業自得だ。
○「モリカケ」「桜を見る会」の疑惑、民主政治を根幹から揺るがす公文書偽造、隠ぺいは決して許されるものではない。森友事件では夫婦そろって森友学園を支援し、国有地の格安払い下げ、その理由開示を拒否、加計学園問題では規制改革の元に加計氏に新獣医学部開設の利権を与えた。桜を見る会では後援会活動に政治資金規正法違反疑惑が出て、600人を超える法曹関係者が東京地検に告発している。地検が受理したかどうかはわからない。
「モリカケ」「桜を見る会」の疑惑は政権の体質に根差す問題で全体の評価に決定的影響を与えていないというが、公文書偽造・隠ぺいなど民主政治の根幹を揺るがし、規制改革も私利私欲、安倍さん自ら公職選挙法違反、政治資金規正法違反にさらされる結果になったことがどうして評価に大きく影響しないのか。
○得意とする外交はどうか。国連の改革を目指した行為は評価できる。そのために賛成票を得るべくアフリカ外交を繰り返した。国会審議の合間を縫っての外遊は問題だったがそれなりに評価すべきだ。
トランプ大統領との友好関係を築いたというがビジネスが目的で本当の友好関係ではないように思える。伊勢湾サミットでのオバマ前大統領に寄り添う外交はどうかと思った。米国大統領との関係が日米同盟を強固なものにし自民党政権の安定基盤になっていることはわかるがアメリカ頼みでは日本の国益を害することにもなりかねない。
北方4島ではプーチン大統領は癖球を投げてくる。返還など考えていないのではないか。いろんなことを言いながら極東開発資金を出させようとしているとしか思えない。二人だけの会談で何を話していたのか。
北の核ミサイルの脅威を取り除くために経済制裁の強化を主張していたが核・ミサイル開発は進めているし決して脅威はなくなったわけではない。「今度は私が直接金委員長と会談する」というが北は相手にしていないのではないか。
安倍前総理の評価も視点を変えれば反対の評価になる。どこに視点を置くかによるのだ。
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