2019年11月23日土曜日

安倍長期政権の弊害:賞味期限は超え、消費期限まで後2年てとこか


安倍政権が長期化する中でその功績、弊害が問われだしたが、実際のところ賞味期限が切れ、消費期限まで後2年というところか。新聞報道では安倍政権を長期に支えているのは経済政策であるアベノミクスだというがそれとは裏腹に世論調査ではアベノミクスで経済は良くなったという人は20%程度、大部分は実感がないという。

以前、安倍総理が出演していたTBSの報道番組で景気の街角アンケートの結果を発表したとき、やはり「実感がない」が大多数だったところで、安倍総理が大反論を展開したのだ。

今まで聞いたこともない指標を次々に挙げて成果を訴えたのだ。国会での審議でもそうだが、野党が指摘した経済指標ではなく別の経済指標を挙げて抗弁しているのだ。同じ土俵で勝負していない。

2012年12月に発表されたアベノミクスの第一の矢が「大胆な金融政策」、第二の矢が「機能的な財政出動」、第三の矢が「民間投資を起こさせる成長選略」だが、その後アベノミクスの第二ステージで新3本の矢を放ちGDP600兆円などを目指すというのだ。

最近ではアベノミクスは破綻しているとか、息切れだといわれている。安倍総理自身も特にアベノミクスに言及しなくなった。別の言い方をすれば賞味期限切れということか。

安倍総理の作戦は経済成長を第一に掲げ実績を作って憲法改正など自分のやりたい政策を打ち出すことでバランスが取れていると評価する専門家もいる。

確かに、円は80円台から108円台に安くなり、株は10000円台から今は23000円台、GDPは60兆円増、雇用も500万人程度増加した。

ところが、物価目標2%は異次元の金融緩和だけでは効果が無く、マイナス金利政策を導入しても0.3~1%程度、目標の脱デフレは遠い。

異次元の金融緩和策をリードしているエール大の浜田名誉教授は「雇用が改善しているのだからいいだろう」と言い出した。FRBも雇用の改善を目標にしていた。でもその雇用の改善も非正規従業員の増加で賃金は上がらず、消費も伸びていない。

日銀黒田総裁が華々しく打ち上げた「2年、2%」が、何故達成できないのか。2%の目標が安定的に達成できるまで、異次元の金融緩和を続けるという。安倍総理もそこに強い意欲を持っているが、何時までも放っておくこともできないという。

そもそも安倍―黒田路線で異次元の金融緩和を始めたことになっているが、日銀の白川総裁の時も量的緩和に取り組んでいたが金融システムの安定には効果があったが、景気の押し上げには限定的だったと認めている。

ところが、2012年ごろ自民党が「大胆な金融緩和」を打ち出し、当時の民主党政権も日銀に更なる量的緩和を要求したが白川さんはウンといわなかった。代わった自民党安倍政権は白川さんに代えて黒田さんを送り込んだ。政策委員もリフレ派を選任したため、白川さんは任期を残して辞任したのだ。

後にFRBの議長になるイエーレンさんと浜田さんはトービン教授の景気後退期に回復軌道に乗せるために長期金利低下を図る戦略を学びこの戦略を応用した政策として長期低金利政策と量的緩和を組み合わせた金融政策を考え出した。

2008年にFRBのイエーレン議長が採用し、2012年に浜田さんが政権に紹介し13年黒田さんが日銀総裁として異次元の金融緩和、そして今マイナス金利政策を維持している。マイナス金利政策はECBのドラギ総裁(今は退任)がはじめて導入したのだ。

要するに量的緩和策、マイナス金利策の検証もしないままにFRBやECBが導入しているままに日銀も導入したのだ。 

主流派経済学者は早い時期から金融危機では効果があるが平時では景気対策としての効果はないといったり、インフレターゲットはデフレ脱却の特効薬ではないといったり、事実の検証にもとづかない非伝統的金融政策というのが経済学的コンセンサスになっている。

経済政策以外でも経済界は成長選略を言うが、どの政権でも成長選略は目指していたが、どういうわけか実効性がない。担当官庁がタイトルを代えて再提出する状況ではないか。
市場にカネを流し、低金利政策、量的緩和策を継続しているが企業は新たな投資をするのではなく、内部留保に勤め今は460兆円にもなった。之を吐き出さそうと政府は考えているようだが経済界は抵抗している。大きな企業は無借金経営でよい投資先があれば借金しなくても良いのだ。

財政再建も遠のいている。財政黒字化は2020年から2025年に先延ばしされた。今回消費税10%にあげたが借金の返済に充てるのではなく、半分は全世代型社会福祉制度の維持にまわされる。

続く自然災害の復興に財政出動も必要になる。赤字が積みあがることは回避できないか。防衛費もかさむばかりだ。55兆円から更に米軍の駐留費負担増が約1兆円と見られている。

防衛費拡大を回避するためには外交が重要というが、中国と首脳会談をやっても尖閣諸島近辺の安全は改善できていない。北朝鮮とは外交もうまくいかない。

プーチン大統領とはファーストネームで呼び合っているが北方4島の返還問題は頓挫したままだ。安倍総理はしょっちゅう会っているが改善は見えない。

米中貿易交渉も安倍総理はウィンウィンの関係というが、誰もそう思ってはいない。説明不足、交渉経過が分からぬままに衆院を通過した。そのうちにトランプ大統領からとんでもないツイッターが流れてくるかもしれない。

経済政策がうまくいかない一方で、憲法改正の国会審議も進んでいない。安倍政権は自民党の担当者を総入れ替えで対応しようとしているが、一番の問題は「安倍総理自身が信用されていない」ことにある。一度も改正していないことに問題があるというが、欧州の改正が多い国の事情調査では、それなりの要因があるというのだ。

安倍総理の賞味期限は過ぎていることは確かだ。アベノミクスの第2ステージのころだろう。後2年は消費期限待ちだ。消費期限を待たずに捨ててしまうか。

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